開催にあたって
この度は”工房ごだい”の代表者であり作家である川勝五大さんのウツワを皆さまにご紹介させていただきます。
個展の企画の時期は去る冬に遡るもので、そのときは、新型コロナウィルスが席捲した今のような状況が訪れるとは想像すらしていませんでした。
誰かと一緒に過ごす時間や、自分や家族の健康のためにシッカリと食べること。コロナがやって来る、前と後でも本当に大事なものは変わりませんし、"巣ごもり"の期間は、それらを確かなものとして感じられたのではないでしょうか。
これから"巣"以外の場所での時間が2倍3倍になったとしても、"巣"の大切さは、今の1/2や1/3になることはないでしょう。
どうすれば、自分たちにとって居心地のよい"巣"になるか、さらには、僕たちがこれまでよしとしてきた(いろんなレベルの)"巣"は今後もそれであり得るのか、いろいろなことを考えさせられます。
このような時期だからこそ、改めて川勝氏のウツワに光を当ててみたいと思えました。
川勝五大さんは、父であり師である英十津さんの背中を追いながら、やがては自身の名前を冠した工房をひらくに至ります。(詳細は、川勝氏のホームページをご参照くださいませ。 http://kawakatsugodai.com/profile/)
漆器の制作の現場では、一つのウツワをつくる過程で幾つもの工程が分かれていて、それぞれは木地師や塗師などと呼ばれています。一方で英十津さん(工房木屑)は、それらの全工程を1人(又は五大さんと2人で)でこなし、その自己完結性によって人里離れた山の中での制作を可能にしてきました。
木材は、屋根の上で雨や風さらには雪や霜に曝し、何年もの間ねかされて、すっかり土地の記憶を刻み込まれた後に木取りされます。
花背の山あいの空気が湿気をはこび、夏は高地特有の涼しさ、冬は作業場と階上(住まい)の暖房が、ともに漆の乾燥を助けています。
川勝さんのウツワの背景には、その中のヒトだけでなく、ウツワの材料もろともの職住一体の暮らしがあります。
広い意味のジェネラリストとしての生活者、それは高度に洗練された"巣ごもり"でもあります。
ご来場いただく皆さまのほとんどは、分業化した職域で活躍されて社会をそれぞれの場所から支えておられることでしょう。そのような観点からは、"巣ごもり"は個々の行動の停止を意味し、場合によっては社会の停止に至らしめます。
川勝家のような一風変わった"巣ごもり"からは、これからの暮らしのヒントがあるかも知れません、、むしろ積極的にヒントにしていただきたいとも思えます。
当日は、ウツワにのったオヤツ(有料)を召し上がっていただいたり、ウツワに盛られたソバ(有料)を頬張ったり、花背の新緑を目で楽しんで(無料)いただきます。また、作家在住地ならではの試みとして、工房の見学(各日に1回のみ)をお楽しみいただけます。
五大さんとお話をしたり、彼のつくったウツワにふれてみて、それが手とご自身の暮らしに馴染むようであればお持ち帰り(もちろん有料)いただければ幸いです。
なお、コロナ・ウィルスの感染拡大防止のため、展示会場については同時に滞留されるお客さまの定員を定めます。また、手指の殺菌等の適切な感染対策を励行します。
企画・運営 HANA-Re 、協力 石川奈都子写真事務所 HoneyAnt